はじめに
近年、大阪のオフィス市場は大きく動いています。新築ビルを中心に坪4万円を超える成約事例も珍しくなく、賃料相場の上昇は明らかです。
さらに、原状回復費用や内装費用といった移転コストも高騰傾向にあり、従来のように「高いから出る」という選択が簡単ではなくなっています。
とはいえ、貸主からの値上げ交渉をそのまま受け入れるのも、経営判断として悩ましいところ。
本記事では、そうした経営者の方に向けて、現実的なコスト削減移転の考え方をお伝えします。
厳しい現実
まず知っておくべきは、「貸主の値上げ交渉は、根拠のあるケースが多い」という点です。
オーナー側も周辺ビルの賃料水準を把握しており、単なる“言い値”ではないことがほとんどです。
もし今お使いのオフィスが好立地かつ一定以上のビルグレードである場合、
「同等条件で今より安い物件」は、実質的に存在しません。
仮に奇跡的に見つかったとしても――
移転には「原状回復費」「内装工事費」「移転諸経費」といった初期費用がかかるため、結果的に「移転する方が高くつく」ことも多いのが実情です。
移転コストの現実
オフィス移転における主なコストは次の3つです。
■原状回復費用
10万円/坪程度で済む場合もありますが、ビル仕様や内装の作り込み次第では30〜50万円/坪になることもあります。
■内装費用
最低限の什器を置くだけなら10万円/坪以内も可能ですが、会議室・受付・造作などを整えると、数十万円.坪に跳ね上がります。
■その他(引越費用、什器購入費など)
仮に原状回復+内装費+諸経費で60万円/坪とすると、50坪のオフィスで約3,000万円。
一方、賃料が5,000円/坪値上げされたとしても年間上昇分は6万円/坪の約300万円増。
単純計算で10年分の賃料差額を、初期費用で先払いすることになります。
この数字を見ると、「簡単に移転で節約」とはいかないことが分かります。
現実的なコスト削減移転の方法
コストを下げる方法は実質的に次の3つしかありません。
1.面積を縮小する
2.ビルのグレードを下げる
3.立地を変える
それぞれの現実を、順に見ていきましょう。
1.面積を縮小する
コスト削減効果は最も大きいものの、最も難しい方法でもあります。
面積を半減できるほどの改革でなければ、効果は限定的です。
「リモートワークをどこまで許容するか」
「共用スペース利用やフリーアドレス化を進めるか」
「会議室を減らし、貸会議室利用に切り替えるか」
こうした経営判断が必要で、業務運営そのものの見直しが前提となります。
仲介会社として他社事例の紹介やレイアウト提案、変則的な方法としてレンタルオフィスやセットアップオフィスの活用など、様々な提案も可能ですが、この領域は企業の文化や方針に深く関わる部分です。
慎重に検討されるべきでしょう。
2.ビルグレードを下げる
比較的現実的な選択です。
たとえば梅田エリアでは、Sランクビルが坪4万円前後。
これをBランク以下に切り替えることで、3万円〜2万円程度まで抑えることが可能です。
ただし、現在すでにBランク以下のビルに入居している場合は、「これ以上グレードを下げる=設備や管理品質の低下」を意味し、従業員満足度や採用面に悪影響を及ぼすリスクもあります。
また、オフィスの密集エリアでなければ、そもそもビルグレードの選択幅が限られていることも多いため、この方法自体が思うように取れない場合もあります。
3.立地を変える(最も現実的な方法)
立地を見直すことは、最も柔軟かつ効果的な方法です。
「立地」とは、駅からの距離とエリア(地域)の両方を指します。
例えば梅田においては、駅直結が3万円~4万円の相場なのに対して、駅徒歩5〜10分なら2万円~3万円と、徒歩距離だけで数割の差が生じます。
また、同じ大阪市内でもエリアを変えることで、賃料の水準は大きく変わってきます。
エリア選びのコツと、エリアごとの賃料相場の考え方
賃料相場という言葉、実は少し曲者です。単純に「平均賃料」で比較してしまうと、正確な判断を誤ることもあります。
【平均賃料だけでは見えない落とし穴】
たとえば、あるエリアで新築ビルが次々と建てられていれば、そのエリア全体の平均賃料は当然上がります。
逆に、築年数の経ったビルばかりが残るエリアでは、平均賃料は低くなります。
しかし、それは本当にそのエリアの「相場」と言えるでしょうか?
仮に、同じ条件のオフィスビルをAエリアとBエリアに1棟ずつ建てたとしたら、それぞれいくらで貸せるのか――
この「同条件ビルで比較した場合の水準」こそが、真の意味での“エリアの賃料相場”といえます。
とはいえ、仮定の話だけでは現実的でない。
実際の賃貸市場では、仮想的な比較ではなく「今、募集に出ているビル」が基準になります。
たとえば、築20年のBランクビルなら坪1万円が相場のエリアでも、現在募集中の物件がすべて新築で、いずれも坪2万円台なら、実際の募集相場は2万円ということになります。
【ビルグレードと物件数の関係も重要】
もうひとつ見落としがちな点が、「そのエリアにどれだけ対象となるビルがあるか」です。
ビルの絶対数が少ないエリアでは、そもそも希望の面積やグレードに合う物件が出てこないケースもあります。
「賃料は安いけれど、希望に合う物件が出てこない」
――そんな状況も珍しくありません。エリア選定では、物件数の豊富さも重要な判断材料になります。
例えば西天満エリアなどは、根強い人気のあるエリアですが、人気とイメージ程にオフィスビルは多く無く、新築も長い間建っていません。
小型の物件が比較的多く、大型のビルも小分けに分割してしまっているため、例えば100坪の募集床を探そうと思った場合、そもそも1棟も該当物件が無い、なんてことが良くあります。
こうした点を踏まえると、コスト削減を目的とした移転先の検討では、次の条件を満たすエリアがおすすめです。
・現オフィスよりも相場が安いこと
・オフィスビルの棟数とラインナップが豊富であること
単に「賃料が安いエリア」ではなく、希望条件で選択肢の多い安いエリアを探すことがポイントです。
コスト削減移転にオススメな大阪オフィスエリア3選
1.本町エリア
大阪市内で最もコストパフォーマンスに優れたオフィスエリアは、本町エリアです。
賃貸オフィス仲介のプロである弊社も本町に拠点を構えており、同業他社の多くも本町にオフィスを構えています。
このことからも、本町がいかにバランスの取れたオフィスエリアであるかが分かります。
下記のクイックマップ(弊社制作のオフィスマップ)をご覧いただくと、本町エリアには主要オフィスビルが高密度にプロットされていることが確認できます。
S〜Eまで、あらゆるグレード帯のビルが揃い、常に価格競争が行われているため、独占的に賃料が吊り上げられることがなく、適正な相場感が維持されている点も本町の大きな魅力です。
また、本町は街区が碁盤の目状に整備され、エリアも比較的広いため、
「駅から多少歩いても良いので、設備の整ったビルをリーズナブルに借りたい」といったニーズにも柔軟に対応できる物件が多く存在します。
このように、コスト・利便性・選択肢のバランスが取れた本町は、コスト削減を目的としたオフィス移転に最適なエリアといえます。

2.堺筋線の北浜~長堀橋エリア
次にオススメなのが、堺筋線の北浜~長堀橋エリアです。
大阪市内を縦断する主要地下鉄路線(四つ橋線・御堂筋線・堺筋線・谷町線)の中で、堺筋線は唯一梅田エリアへ直接アクセスできない路線です。
そのため、一般的な路線評価としてはやや控えめに見られがちです。
しかし実際には、堺筋線の北浜~長堀橋区間は、御堂筋線の淀屋橋~心斎橋区間から徒歩10分圏内に位置しており、ビジネスエリアとしての利便性は極めて高いと言えます。
御堂筋線沿線の東側エリアとしてみることも出来るため、多くのオフィスビルが立地しており、Sランクビルこそ限られるものの、A~Eランクの幅広いグレードのビルが豊富に揃っているのが特徴です。
また、同じく縦軸路線である谷町線沿線(東梅田~天王寺間)と比較しても、堺筋線沿いの方がオフィスビルストック量は圧倒的に多く、選択肢の広さが際立ちます。
このように、「路線としての評価は控えめ」「御堂筋線へも徒歩圏」「物件数が豊富」という条件が重なるため、賃料を抑えつつも一定の品質を確保したい企業にとって、堺筋線北浜~長堀橋エリアは非常にコストパフォーマンスの高い選択肢となります。
3.肥後橋エリアor西中島エリア
3位を決めるのは難しい市況ではありますが、西区の肥後橋エリアおよび淀川区の西中島エリアは、いずれも立地利便性と賃料のバランスに優れた、コストパフォーマンスの高いエリアとして長年人気を集めています。
両エリアとも、上位に挙げた本町エリアや堺筋線沿線ほどの物件ボリュームはないものの、B~Eランク帯のオフィスビルが豊富で、賃料を抑えながら一定水準以上のオフィス環境を確保できる点が大きな魅力です。
特に西中島エリアは、新大阪駅へのアクセスが至便であり、新幹線の利用が多い企業や関西圏外との往来が多い企業にとっては、他エリア以上に実用性の高い立地といえます。
ただし、近年は大阪市内全体で空室率が低下しており、この2エリアも例外ではありません。
オフィスビルの棟数自体は決して少なくないものの、実際には「希望条件に該当する物件に募集区画がゼロ」「募集待ち状態」といったケースも珍しくなくなっています。
特に人気が高いのはBランクビル(築年数はやや経過しているが、大通り沿いの大規模ビル)であり、解約が出た際も、既存テナントによる増床で外部募集が行われないことも多く見られます。
このように、肥後橋・西中島の両エリアは、条件が合えば即決すべきエリアとも言える、希少価値の高いマーケットとなっています。
大阪の賃貸オフィスのエリア情報に精通したプロにご相談を
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弊社では各エリアの市場動向や最新の物件情報を日々アップデートしております。
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全国の主要オフィスエリアの主要オフィスビルをプロットしたエリアマップをご提供いたします。
大阪においても、北区・西区・中央区・淀川区の主要4区に加えて、江坂や京橋OBPエリアなど、二次エリアも網羅しております。
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