はじめに~現在のオフィス市況について~
2025年現在、オフィス市場は空室率が低く、賃料水準も高い状態で推移しています。特に、梅田・淀屋橋エリアの新築ビルの好調さは顕著で、Sクラスビルを中心に賃料は最高値を更新しています。
しかし、マーケット全体が好調に見える一方で、どのビルも満室になるわけではありません。むしろ、企業のオフィスを選ぶ目は過去よりも厳しくなっています。
なかでも、築20年以上のビルにおいて、明暗の差が非常に大きくなっていることが特徴です。現在のニーズに適応できているビルは、高値でも早期にテナントが決まる一方、仕様・機能が古いままのビルは、市況が好調にもかかわらず、空室の長期化が目立つ傾向にあります。
つまり、築古ビルであっても、時流に合った適切な改修(バリューアップ)を行うことで、競争力を高め、入居率改善・賃料アップを実現できる可能性は十分にあります。
本記事では、ビルオーナー様・アセットマネジメントご担当者様向けに、マーケットの最新動向を踏まえた、費用対効果の高いオフィスビル改修のアプローチをご紹介します。
1|なぜ今「築古ビルのバリューアップ」が必要なのか
市場は堅調で、空室率は歴史的低水準、賃料も高水準です。
しかし、その需要は一部に集中しており、選ばれるビルは限定的です。
企業のニーズは以下のように多様化・高度化しています。
・共用部を含めた快適性
・コミュニケーションを促す空間
・WEB会議対応
・来客対応
・省エネ性能、ESG対応
・セットアップによる早期入居性
2|バリューアップを実現する3つの改修アプローチ
改修は以下3つの分類で検討できます。
① 1棟丸ごと改修
② 共用部のみ改修
③ 専有部のみ改修(セットアップ化等)
① 1棟丸ごと改修
ビルの競争力を抜本的に高める取り組み。
・耐震補強
・省エネ化(高効率空調、LED化、断熱性向上)
・フロア構成最適化(1フロア貸し、分割貸し、セットアップオフィス、レンタルオフィス)
・シェアラウンジ、貸会議室の導入
大口テナント依存から分割対応に切り替えることで、ターゲット拡大と空室リスク分散が可能。
1棟丸ごと改修の主な事例
・CAMCO肥後橋ビル
・本町NXビル
② 共用部のみ改修
小規模投資で印象を大きく改善する取り組み。
・エントランス刷新
・トイレ、水回りの改修
・ラウンジ、貸会議室、WEBブース整備
ビルのグレードが向上することで、賃料アップが期待できます。
共用部のみ改修の主な事例
・新大阪プライムタワー
・EDGE備後町
・淀屋橋北浜センタービル
③ 専有部のみ改修(セットアップ化)
セットアップオフィスは、時間と初期費用を抑えながらすぐ利用できることが最大の価値。
空室期間の短縮し、賃料水準の向上も期待できます。
セットアップ化の主な事例
・GAZELLE RIO 淀屋橋
・L.Biz大阪本町
3|改修アプローチ別の効果と投資判断ポイント
■ ①1棟改修が向いているケース
以下のような特徴がある場合、分割貸しや新たな付帯施設の導入により、ビルの“再ポジショニング”が成立します。
複数フロアに連続した空室が発生している
旧式空調・照明など、設備更新のタイミングが来ている
フロア形状が特殊で、汎用性が低くリーシングに時間がかかっている
周辺エリアで新築・大型の供給が増え、既存競合との差別化が必要
1棟改修は投資額こそ大きいものの、建物の価値向上(NOI増加)→出口戦略での価格上昇につながり、投資回収の実現性が高いのが特徴です。
■ ②共用部改修が向いているケース
「設備更新までは必要ないが、このままだと競争に負ける」というビルは、共用部改修だけで成果につながることが多いです。
エントランスやトイレの古さが来訪者の満足度に影響
テナントからWEB会議スペースのニーズが増加
競合ビルと比較して、第一印象(エントランス)の弱さが指摘されている
内覧は来るが決定率が低い
この領域は投資額に比して効果が出やすいため、AM・リーシング担当から最も相談が多いメニューです。
賃料アップが実現しやすく、稼働改善にも直結します。
■ ③専有部改修(セットアップ化)が向いているケース
大阪市内でも特に顕著ですが、昨今は小規模〜中規模フロアでセットアップオフィスの需要が急増しています。
面積が30〜80坪前後
空室が長期化している
競合にセットアップ物件が増えている
早期成約による稼働安定が優先
セットアップオフィスの魅力は、**「入居したいが内装に時間とコストをかけたくない」**という企業の増加と完全に合致している点です。
初期投資はかかりますが、賃料水準の向上と空室期間短縮(=年間収益の改善)が見込めます。
4|実際に成果が出やすい「改修施策」トップ5
ここでは、大阪市内でのリーシング事例を踏まえ、特に費用対効果が高かった改修内容をご紹介します。
① エントランスのイメージ刷新
・床材変更
・サイン計画見直し
・照明計画の再構築
わずかな変更でもビルの印象は大きく変わり、内覧時の決定率が10〜20%向上した例もあります。
② トイレ・水回りの刷新
テナントが最も気にするのは“使用頻度の高い空間”。
水回りをリニューアルするだけで、築古ビルでも「古さ」を感じさせないことが可能です。
③ ラウンジ・WEB会議ブース新設
少人数化・ハイブリッドワーク時代に必須の機能。
外部共用部の充実度は、企業の働き方改革ニーズに直結し、内覧時の好感度が大きく上昇します。
④ セットアップオフィス(家具付き含む)
特にスタートアップ・支社開設など、足の軽い企業を獲得しやすくなり、
成約スピードは従来比1.5〜3倍に改善することも珍しくありません。
⑤ 空調・LED更新による省エネ化
運用コストの削減は、ESG対応を求められる大手企業の入居条件に直結します。
更新のタイミングで導入するだけでもビル価値向上に直結します。
5|改修費用を回収するための「リーシング戦略」
改修が成功しても、その価値を市場に正しく伝えられなければ賃料増加にはつながりません。
重要なのは、リーシング戦略とセットで考えることです。
■ ポイント1:ターゲットセグメントの明確化
例:
小規模セットアップ → IT・士業・コンサル
中規模フロア → BPO・バックオフィス
大規模連続フロア → メガテナントの統合移転
改修内容とターゲットの整合性が高いほど、成約率が飛躍的に向上します。
■ ポイント2:内覧導線を強化する
エントランス → 共用部 → 専有部の「見せる順番」設計
事例パネルや改修前後の比較写真を案内時に掲示
「良くなったポイント」が一目で伝わる動線設計は、競合優位性を高めます。
■ ポイント3:マーケティング資料の最適化
3Dパース
VR内覧
セットアップのレイアウト案
ESG改善ポイントの資料化
特にAM・貸主が見落としがちなのが、**“改善した価値をビジュアルで伝える”**ということです。
6|最後に:築古ビルの競争力は、まだまだ高められる
大阪のオフィス市場は、今後も大型再開発が続き、競争はさらに激化していきます。
しかし、築古ビルであっても、適切な投資判断と戦略的リーシングにより、
「選ばれるビル」へと生まれ変わることは十分に可能です。
本記事が、皆さまのビル運営・資産価値向上の一助となれば幸いです。
改修内容の検討や、リーシング状況の分析など、個別のご相談も承っております。
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