環境認証制度とは
昨今では、「持続可能な開発目標(SustainableDevelopment Goals: SDGs)」が世界共通のテーマとなっています。上図にあるSDGsを実現するための17の目標のうちの一つに、「気候変動に具体的な対策を」とありますが、様々な分野で環境への配慮が求められており、とりわけ建設分野は人が住む街や、地球環境への影響が大きい分野と言えます。世界の産業別のCO2排出量の割合では、建設業関連のCO2排出量は37%で、産業の中でも大きな割合を占めているようです。こういったことを背景に、建物をつくる際に、どのような過程で計画・建設され、どのような環境配慮がなされているのか、企業が行う環境配慮に対する取り組みを第三者機関が評価するシステムで、可視化できるものが「環境認証制度」です。
認証機関やその種類とは
環境認証制度は日本だけではなく世界中に普及しており、その種類も多岐にわたりますが、本章では主に日本のオフィスビルで取得されている認証制度を中心に触れていき、一例にはなりますが認証取得済みの大阪の賃貸オフィスビルをご紹介させて頂きます。
CASBEE(キャスビー)
一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)による日本発祥の環境評価制度で、建物の環境性能を総合的に評価する制度です。評価は、 C、 B-、 B+、 A、 S(右に行くほど高評価)の5段階評価で、評価対象は建築物にとどまらず都市や街区も対象となっています。CASBEEの認証には大きく分けて下記の5つの種類があり、その中でもオフィスビルを対象としているのは環境効率に着目した「CASBEE-建築(新築)」と、働く人の健康面や快適性に着目した「CASBEE-ウェルネスオフィス(以下、 CASBEE-WO)」です。
大阪の賃貸オフィスにおいても、SランクやAランクの取得ビルが複数ございます。
大阪梅田ツインタワーズ・サウスやJPタワー大阪、イノゲート大阪などはSランクを取得しており、全国的に見ても非常に高い評価を受けています。
CASBEE大阪みらいについて
大阪の場合は、CASBEE-建築(新築)をCASBEE大阪みらいに置き換えています。
CASBEE大阪みらいとは、大阪府独自の環境性能評価システムで、CASBEEをベースに大阪の地域特性に合わせた評価基準を設けています。「みらい」という名称が示す通り、未来志向の環境配慮型建築物を推進することを目的としています。
■評価対象: 新築および既存の建物、特に大阪府内の建築物。
■評価基準: CASBEEの基本的な評価項目に加え、大阪特有の気候条件や地域性を考慮した独自の評価基準が設定されています。大阪府の環境政策に沿った評価項目も含まれており、地域社会に貢献する要素(例えば緑化や地域資源の活用など)も重視されます。
■評価結果: CASBEE-建築と同様に、「S」「A」「B+」「B-」「C」の5段階評価が行われますが、大阪府内の建物同士での比較や評価が可能です。
■特徴: 大阪府特有の環境配慮や地域特性を評価に反映しているため、府内での建築物の環境性能向上に特化しています。
全世界で広く普及しているアメリカ発祥の制度で、総合的な環境性能を評価する環境認証制度です。 CASBEEと同じく、評価対象は建築物だけでなく都市やコミュニティも含み、評価基準と評価対象はどちらも似ていますが、 LEEDの認証基準は地球環境に応じて日々アップデートされることが特徴の一つです。 CASBEEが日本で生まれたのに対し、 LEEDはアメリカ生まれかつ世界中で使用されていることから、よりグローバルな観点をもつ評価制度といえるでしょう。こちらは、サーティファイド、シルバー、ゴールド、プラチナ(右に行くほど高評価)と4段階です。
ネットで公開されているLEEDの取得ビル一覧の中には、大阪の賃貸オフィスビルは見つかりませんでした。
しかし、2025年竣工予定の仮称)淀屋橋駅西地区市街地再開発がLEED認証GOLDを取得予定のようです。
WELL(ウェル)
WELLもLEEDと同様アメリカ発祥の環境認証制度で、建築物利用者の健康性や快適性を評価する制度です。 WELLとLEEDはどちらも建築・都市空間を評価するシステムですが、 LEEDは「省エネルギーなどを含む総合的な環境性能」にフォーカスしているのに対し、 WELLは建物の中にいる「人の健康・ウェルネスとの関係」にフォーカスます。また、有効期限と現地審査があるのも特徴の一つで、 3年ごとに再認証が行われ、書類審査に加えて現地審査も行われます。認証取得には継続的な努力が必要なため、取得の難易度は高めだと言えるでしょう。評価はサーティファイド、シルバー、ゴールド、プラチナ(右に行くほど高評価)と4段階です。
大阪の賃貸オフィスでWELL認証を取得しているビルはCABEE取得よりもはるかに少なく、2024年10月時点ではアーバンネット御堂筋ビルのみが取得しています。
BELS(ベルス)
国土交通省のガイドラインに則り、一般社団法人住宅性能評価・表示協会が創設。原則として新築・既存を問わず全ての建物が評価対象で、評価時期についても着工前~竣工後まで幅広く対応しています。 建物の省エネルギー性能を評価し、 ★が1~5つの5段階(5が最高)評価です。
大阪梅田ツインタワーズ・サウスがBELSの★5つ取得しています。
ZEB(ゼブ)
国土交通省のガイドラインに則り、一般社団法人住宅性能評価・表示協会が創設。
先述のBELSの最高ランク(★★★★★)を取得したうえで、さらに省エネ性能が高い建物は「ZEB」を取得することができる仕組みとなっています。
評価は、以下の4つです。
①ZEB・・・・一次エネルギー消費量削減率が100%(最高評価)
②ZEB Ready・・・一次エネルギー消費量削減率が75%→恐らく大阪ではじめてアーバンネット御堂筋ビルが取得!
③Nearly ZEB・・・一次エネルギー消費量削減率が50%
④ZEB Oriented・・・一次エネルギー消費量削減率が40%以上(延床面積が1万㎡以上の学校・オフィス・工場など)→淀屋橋ステーションワンが取得予定